読書をしても、読んだ内容を思い出せなくて悩んでいませんか?
今回は、一回の読書でたくさんの情報を理解したり、面白いほど記憶に残したりするための方法を紹介します。
この方法は、読書だけでなく勉強や習い事などにも有用ですので是非試してみて下さい。
なぜ忘れてしまうのか?
本の内容を理解したり記憶したりしやすくする方法を紹介する前に、記憶に関して簡単に説明します。
記憶できずに忘れてしまう理由は、短期記憶のまま頭の中に存在しているためです。
短期記憶とは、「保持時間が短く自動的に消滅する記憶」です。
短期記憶は、勉強後に起こる新しい経験で阻害されると脳科学の研究から報告されています。
テスト勉強のために、一夜漬けして覚えた知識は一週間あとには全く覚えていないという経験はありませんか?
一夜漬けは、短期記憶の典型的な例です。
一方、短期記憶とは対照的なものとして、長期記憶というものがあります。
長期記憶とは、「年単位にわたって長時間保持される記憶」です。
生活するために毎日実施していることは脳科学では長期記憶に分類されます。
例えば、車の運転方法を習得する際は、教習所で何度も思い出したり勉強したりしながら運転方法をマスターしますよね?
運転免許を取得するころには、ほぼ無意識で運転を出来るようになっているかと思います。
このように、頻繁に使用する生活関連の記憶に関しては長期記憶になっています。
そのため、ほぼ永久に思い出すことが出来る状態であることが多いです。
では、テストのために勉強したことを脳科学の観点から長期間記憶するためには、どうすればいいのでしょうか?
色んな方法が発表されていますが、私自身や周囲の方も試して特に有用だったのは、
- 何度も知識を使う
- 感情を刺激する
- 視覚化する
との3つです。(他にも色んな方法があるので、別の記事で紹介させて下さい。)
上記3つに関して、以下に簡単に説明します。
脳科学的に正しい記憶方法とは?
脳科学的に正しい記憶方法①何度も知識を使う
知識を何度も使うというのは、問題集で問題を解くだけでなく人への説明も含まれます。
何回もその知識を思い出すといった方が分かりやすいかもしれません。
何度も記憶を使うと良いことが判明した脳科学の研究は沢山あります。
有名な研究では、穴埋め問題を3回やることで覚えたい知識だけでなく関連知識も定着したという報告があります。
大学受験や高校受験などで頭の良い人に勉強方法を聞いてみると、「問題集を3周するのがオススメ」ということを聞いたことがありませんか?
これは、何度も同じ知識を使うことで長期記憶になり、受験のテスト本番まで知識をいつでも引き出せる状態にしているのです。
もちろん個人差も多少はありますので、問題集を5周するのが良いという方もいらっしゃいます。
脳科学的に正しい記憶方法②感情を刺激する
特に楽しかったこと、悲しかったことなど過去の体験に関しては覚えていませんか?
感情を刺激された物事に関しては記憶に残りやすいという脳科学の研究結果があります。
以下の研究では、感情的な映画とそうでない映画を見せた時の記憶量をテストしたものです。
感情的な映画の方が、2倍も記憶に残りやすかったという結果でした。
感情を刺激されると記憶に残る理由は、記憶する脳の領域と感情に関する脳の領域が空間的に近く互いに刺激しあっているためと最新の研究では考えられています。
脳科学的に正しい記憶方法③想像する
人は目で見た情報を頭の中で想像して、脳にため込んでいます。
想像することと記憶に関する脳科学の相関研究があります。
単語をそのまま覚えるのと、単語同士の関係を想像しながら覚えるのでは2倍程度の差が出ることが分かっています。
Results from neuroimaging studies have shown that the dorsol…
小説だと人に説明できるのに、参考書を読んでも人に説明できないことが良くありませんか?
そのような方は、想像するために必要な”視覚化”が出来ていない可能性があります。
参考書の視覚化とは、論理構造を整理することです。
脳から知識を引き出す際は芋づる式に引き出すようにすると、引き出しやすいことが分かっています。
そのため、単語をフローチャートやマインドマップや絵のように視覚化しながら覚えると効果的です。
今回紹介する論文は、読書の理解力を上げるための読書方法に関して記載されていますが、上述した3つの記憶方法(何度も知識を使う、感情を刺激する、視覚化する)に分類できます。
読書の内容を理解しやすくするだけでなく、記憶にも残しやすい素晴らしい方法です!
この方法を実際に私自身も試してみると面白いくらいの効果がありました。
読書で記憶に残すための方法を紹介
今回は以下の論文を紹介させていただきます。
Researchers have found that teaching reading strategies is a…
この論文には、以下の6つの手法が紹介されています。
- 予測する(Predicting )
- 視覚化する(Visualizing)
- 関連付ける(Making Connections)
- 推測する(Inferring)
- 要約する(Summarizing)
- 質問する(Questioning)
上記の6つは
「(1)本を読む前、(2)本を読んでいる最中、(3)本を読んだ後、(4)(1)~(3)の全ての時」
に分類できます。
■(1)本を読む前
①予測するとは、「本のタイトル・目次・図などを見て、ご自身が保有している知識を使って本の内容を予測する」と定義されています。
頭の中だけで予測するのではなく、紙に書き出すまたはスマホにメモすることをオススメします。
予測することで、本を読んだ際のギャップが驚きや関心などの感情に作用し、記憶に残りやすくなります。
■(2)本を読んでいる最中
②視覚化するとは、「文字を画像に変換する」と定義されています。
これも頭の中に浮かんだ情景や文書構成に関して、紙に書き出すことがおすすめです。
③関連付けるとは、「自分が知っている知識と本の中に出てくる知識を結びつける」と定義されています。
本の内容と関連付けるものは、
- 自分の持っている知識(Text-to-Text)
- 自分の経験と結びつける(Text-toSelf)
- 世の中で起きたこと(Text-to-World)
の3種類あります。
④推測するとは、「行間を読むこと」と定義されています。
詳細な解説が書かれていない場合、何を意味しているのか分からないときがあるかと思います。
そのようなときには、自身の知識やその本に今まで書かれていたことから推測して自分自身の正解を導くことが大切と述べられています。
■(3)本を読んだ後
⑤要約するとは、「重要なことだけを自分自身の言葉でまとめること」と定義されています。
要約すること自体が重要なのではなく要約する際の過程が、理解を高めると述べられています。
■(4)(1)~(3)の全ての時
⑥質問するとは、「意味を組み立てたり、答えを見つけたり、新しい情報を発見するように尋ねること」とされています。
以下のような質問事項が挙げられています。
- テーマとなっている問題提起は?どんな問題を提示し、どんな解決方法を提案しているのか?
- どう始まり、どう終わったか?
- あなたはこの本から何を学びたいか?
- 同じジャンルの他のホント似ている部分、違う部分は?
- なぜ重要なのか?
- タイトルは内容と合ってるか?本のタイトルをつけ直すとしたら?
- キーポイントやコンセプトは何か?
- 書き出しを確認すると、読者を引き込むためにどんな展開になっているのか?
- 本で扱われている図示されている要素から何を学んだか?
- 著者は読者に対してどう考えて欲しいと思っているか?
- 人に勧めるとき、どの章のどんな情報を一番に取り上げるか?
- 作者はこの本をおもしろくするためにどのような工夫をしているか?
- 作者の主張のどこに賛成できるか?その理由は?
- テーマを説明するために作者がどのような事例を出しているのか?興味深かった例は?
- この本を読んでいるときにどんな感覚になったか?
- この本で最も重要な一文は?その理由は?
- 本の内容を振り返って、自分にとって一番深い箇所はどこか?
上記の6つはポイントは上述した記憶法にも関連しているため、理解力だけでなく記憶力も向上させながら実践することが出来ます。
・感情関連:①予測する、④推測する
・視覚化関連:②視覚化する、③関連付ける
・繰り返し関連:⑤要約する、⑥質問する
実際に試してしました
この読書方法は面白そうだけど、かなり面倒だなと思い実践できずにいました。
そこで、初めから全てを実施するのはハードルが少し高いように感じましたので、以下の④と⑥に関しては一部のみ実施してみました。
・感情関連:①予測する、④推測する(理解に苦しむ箇所のみ実施)
・視覚化関連:②視覚化する、③関連付ける
・繰り返し関連:⑤要約する、⑥質問する(口コミを書く、人に説明する際に必要な質問のみ)
正直に言うと、この読書方法を試した当日はあまり効果は分かりませんでした。
(この方法効果あったのかな??)
と思っているうちに、1か月経って友達に最近読んだ本の紹介をする機会がありました。
すると、通常よりも内容を細部まで覚えており、スラスラと説明できました。
通常であれば、2週間程度で忘れてしまうのですが、1か月経過しても知識をすぐに引き出せたのです!
実際にこの方法を試してみると、面白いほど理解力や記憶力が向上して、本を読み返す時間が少なくなり総合的に考えると読書の時間を削減できます。
この体験をした後は、この記事に紹介した読書術を実践するようにしています。(全て実践するのは少し時間がかかりますので、一部だけ実施していますが、それでも面白いほど効果が出ています。)
この読書術を生活に活かす実践例
今回紹介した方法は読書だけでなく、勉強や仕事にも生かすことが出来ます。
小中高生(子供への教育)と大学生・社会人(自分に活かす)に分けて、私が考えた実践例を以下に記載しました。
理解力や記憶力の向上に役立ててみて下さい。
小学生・中学生・高校生の方
小学生・中学生・高校生の方は親書や自己啓発書ではなく、教科書や参考書を読まれる方が多いかと思います。
初めて学ぶことばかりのことが多い教科書では、予測したり推測したりするのは難しい場合が多いです。
そのため、学んだことを「要約」して、「人に説明する」というアウトプットを重視することがおすすめです。
友達に勉強を教えあったり、学んだことを子供に説明してもらったりすることが効果的です。
人に説明できなくても、分かったつもりの箇所を見つけることが出来ますし、説明した相手から質問されることで新たな気づきに繋がる場合があります。
子供が勉強を面白いと思うように、教育することが大事になるかと思います。
大学生・社会人の方
色々な資料を読む機会がある大学生や社会人の方は今回紹介した方法をそのまま活かすことが出来ますが、この方法を試すには通常よりも時間がかかるので始めようと思わないかもしれません。
実は時間をかけずに、あることを意識するだけでも読書の理解力、記憶力を向上させることが出来ます。
それは、
他の人に教えようと意識して読む
ということです。
これは、頭の中で「要約する(Summarizing)」ということが常に頭の中で働くためと考えられています。
なかなか試そうと思わないという方には、この方法を一回でもいいから試してみて下さい。
個人差は多少あるので必ずしも効果は出るとは言い切れませんが、面白いほど効果が出る場合もあるので試さないと損しているかもしれませんよ!